第1話

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 もちろん日本も国防軍創設後に組織された旧自衛隊の水陸機動団改め日本国海兵隊、通称、J・M・C(Japan Marine Corps)を派遣。日本でも本土はもちろん小笠原諸島や日本海の舳倉島(へくらじま)などの孤島にもカニが現れ、これを撃退した。このころからこの人類の敵は英語でカニを意味する「クラブ」や「デビルクラブ」「ゴッドクラブ」などと呼ばれるようになる。  このクラブ戦役は人道的な理由から爆撃が有効に使えず、歩兵隊が主力となり戦うという時代を逆行させる戦いとなったため各地で兵士の被害は増えていった。しかしそれは捕らわれた民間人を救うという理由があったため、兵士たちの士気は高かった。そして気高い兵士たちが多く死んでいったが、クラブももっと多く死んでいったのである。最初に現れてから二年近くたち、兵士たちもクラブとの戦いの経験を積み、ほとんどの場所で圧倒するようになった。そして新しい場所での上陸がほとんどなくなった。潜水艦などを駆使して海中捜索を強化し、その兆候がほとんど見られなくなくなり、ついに国連はクラブ戦役の終結を宣言したのである。  人類にとっては初めての団結であり、世界規模での共同作業であり、地球に住む人類という感覚を初めて感じさせる出来事であった。これをきっかけに世界は平和に向かって進むだろうという気運が高まっていた。  その一方で、帰還した兵士たちは色々な戦場でのトラウマに悩まされた。助けきれなかった民間人の死体の山。カニの人柱にされたまだ小さな子供。戦友がカニに真っ二つにされた光景。相手が人間ではなかったため、人を殺したという悩みはなかったが、相手が人間でなかったために、その残酷さは比類ないものであったのである。  そしてある種の人たちにはある考えを芽生えさせた。あのカニどもはどこから来たんだ? 科学者は深海にて突然変異を起こしたとか言ってるが、ちゃんちゃらおかしいぜ。あれは地獄からの来訪者に決まってる。地獄があるってことはそこに住む化け物はいるってことだ。あの狂ったカニどもと比べたら吸血鬼だってゾンビだって可愛いもんだぜ。異形のものは確かに存在するんだ。そうだ、そうに違いない。  そういう考えが世界的に広まった。
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