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そこで言葉を切った課長は、おもむろに立ち上がった。
そのまま、私の座っている場所まで歩みよると、すぐ横に膝を落とした。
胡坐じゃなく、正座。
何事かと面喰いつつも、私は、課長の方へ体の向きを変える。
膝を突き合わせて向かい合ったこの状況に、
この先に待っている、話しの続きに、
ドキドキと、鼓動が早くなっていく。
「課長……?」
心臓の音が聞こえそうな沈黙に耐え切れずに、思わず口を開けば、課長は、少し苦笑気味に口の端を上げた。
「二人の時は、名前を呼んでくれないか?」
「……えっ?」
何を言われるのかと身構えていただけに、放たれた予想外の言葉に、間抜けな声が出てしまう。
「まさか、課長フェチとかいうんじゃないよな?」
「えっ!?」
課長フェチっ!?
「だから、二人の時は、名前」
前にも、こんなやり取りをした気がする。
この話しの流れで、
このタイミングで、
膝を突き合わせて正座して、語る話題ですか、課長!
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