26恋慕-3

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また、いつもの『からかいモードスイッチ』が入ってしまったらしい課長の、水を得た魚のような楽しげな表情が、少しばかり面白くない。 「……嫌です」 ボソリと、低い呟きで答えれば、 「なんで?」 と、悪戯小僧のような瞳が向けられる。 実のところ、単に『課長』と、呼び慣れてしまったのと、今更名前で呼ぶのが照れくさいだけ、 なんて、暴露するのは、更に、からかいモードのスイッチをハイパワーに入れてしまいそうだから、言いたくない。 「なんでもいいじゃないですか。『課長』って呼ばれるのが嫌なら『谷田部さん』って呼びますよ、年上なんだから」 「君も、強情な人だな」 「そんなこと、課長が一番、よく知ってるじゃないですか」 「それもそうだ」 「それよりも、大事な話しの続きを聞かせてください。足がしびれちゃいますから」 「ああ、もう、可愛くないことを言うのは、この口か」 「……!?」 不意に、唇を課長のそれで塞がれて、ぎょっと身を引く。 でも、引ききらないうちに、すかさず、すっぽりと抱き込まれてしまった。
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