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降り注ぐ、
甘い、
甘すぎるキスの雨に、心も体も溶けだしそう。
そんな、溶けるような幸福感に、私は満たされていく。
それなのに。
こんなに近くにいるのに、
どうして、こんなに、胸の奥が苦しくなるのか、
泣きたいくらいの、切なさが、あふれ出すのか、
よく分からない。
近づけば近づくほど、身の内の想いは更に募って行くばかりで、際限がない。
もっと、近づきたい。
もっと、知りたい。
もっと、もっと、と。
――ああ、私って、なんて、欲が深いんだろう。
ひとしきり、私の唇を味わった後、
課長は、私の額に自分の額を『こつん』とくっつけて、クスリと笑った。
「梓の唇は、いつも甘いな」
落とされた囁きに、私もクスクスと笑って、囁き返す。
「課長の唇だって、甘いですよ」
「甘いか?」
「甘ーいです」
だから、きっと、やみつきになるんだ――。
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