第1章

24/53
前へ
/53ページ
次へ
今度の家は清潔で、 ゴキブリも出ず、 セキュリティもしっかりしており、 室内プールまであり、 満足した。 シドニー生活にも加速度的に慣れてきており、 、 逆に言えば、 トーキョーの生活をかなり忘れてしまったことを意味するのだが(これを浦島太郎化現象という)、 ある日、 テレビを見ていたら、 日本からビッグニュースが飛び込んできた。 「日本のKobeという町で大きな地震が発生した模様。 詳細は不明」というテロップが流れた。 画面は日本地図に切り変わり、 その中の神戸付近にマークがしてあり、 先ほどのテロップを繰り返し流していたが、 それ以上の情報は流れず、 (どうしたんだろう?)と訝っていたら、 次の瞬間驚くべき映像が飛び込んできた。 神戸一面火の海、 メチャメチャに壊れた建物や高速道路、 瓦礫の山々。 逃げまどう人々。 。 。 。 。 それはとてもこの世のものとは思えぬ地獄絵だった。 自分の母国ニッポンで起きた大惨事を遠くはなれたオーストラリアで画像を通して見ている。 不思議な感覚だった。 1週間近く遅れて届く日本の新聞で被害状況が拡大されていく様を知るにつれ、 これは未曾有のことが起きたんだと実感した。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加