解脱【Wikipediaより】

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久々の日本。 この弛みきった空気に嫌気がさして、飛び出したのは3年前。 そう、俺は傭兵として生死の境を堪能して、帰って来た。 俺の学生時代は、力任せなヤンチャな日々。 高校卒業しても、働く宛も無く自衛隊に入隊。 根っからの負けん気の強さと、タフさから特殊部隊(通称S)に。 此処の訓練は、通常あり得ない設定でスリリング。 俺は満足していたが、3年が過ぎようとした頃か、本当に人を撃ってみたいという欲望が。 的ではなく、生身の人間を。 それも、自分も死と隣合わせの状況下で。 俺は、自衛隊を除隊し直ぐ様、傭兵に。 その頃、一番危険と言われる中東の某国へ。 イデオロギーなんて、どうでも良かった。 俺は、政府軍の傭兵として、ゲリラに対峙した。 いきなり最前線に送り込まれると、昼夜を問わず敵砲弾が。 流石の俺も、最初は塹壕の中や建物の陰に身を潜めていた。 しかし、そんな状況にも慣れてくると、出鱈目に乱射してくる敵を射撃。 初めて、人を撃ち殺した瞬間は、今でも鮮明に覚えている。 敵とは言っても、ゲリラなので軍服ではなく私服。 民間人とは、区別がつきにくい。 ある日、ゲリラのアジトを急襲した際は、全くの無差別発砲。 子供や、女でもお構い無く。 何故なら、此処では子供でも平気で、銃を撃ってくるし、売春婦のふりをしてベッドで、滅多刺しに殺された仲間も。 でも、これは流石の俺でも堪えた。 毎夜、俺が撃ち殺した奴らが、夢の中に。 なので契約を過ぎると、逃げるように日本へと。 相変わらず、日本の空気は弛みきってはいるが、物陰から発砲される心配は無い。 何の宛も無く歩いていると、背後から 「そこの闇にまみれた、人殺しの若造よ」と 俺は、ギョッとして振り返ると、年配の小汚ない乞食坊主が。 「お前さん、かなり闇の渦に包まれておるの」 俺は、坊主を睨み 「何が、言いたいんだ?」と 「お前さんは、生きながらにして無限地獄の業火に晒されておる」 「此の儘、業火に焼き付くされたいのか?」 俺は、鼻で笑って 「面白い事を言う、爺さんだな」 「俺が、無限地獄だと?」 「確かに俺は、人殺しだ」 「でも、合法的な戦場だからな!」 「坊主に、何が解るんだ?」 坊主は、ニヤリと笑い 「お前さんは、その地獄から逃げて来たんじゃろ」 「じゃが、業火に包まれたお前さんは、もう逃げられはせんよ」
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