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久々の日本。
この弛みきった空気に嫌気がさして、飛び出したのは3年前。
そう、俺は傭兵として生死の境を堪能して、帰って来た。
俺の学生時代は、力任せなヤンチャな日々。
高校卒業しても、働く宛も無く自衛隊に入隊。
根っからの負けん気の強さと、タフさから特殊部隊(通称S)に。
此処の訓練は、通常あり得ない設定でスリリング。
俺は満足していたが、3年が過ぎようとした頃か、本当に人を撃ってみたいという欲望が。
的ではなく、生身の人間を。
それも、自分も死と隣合わせの状況下で。
俺は、自衛隊を除隊し直ぐ様、傭兵に。
その頃、一番危険と言われる中東の某国へ。
イデオロギーなんて、どうでも良かった。
俺は、政府軍の傭兵として、ゲリラに対峙した。
いきなり最前線に送り込まれると、昼夜を問わず敵砲弾が。
流石の俺も、最初は塹壕の中や建物の陰に身を潜めていた。
しかし、そんな状況にも慣れてくると、出鱈目に乱射してくる敵を射撃。
初めて、人を撃ち殺した瞬間は、今でも鮮明に覚えている。
敵とは言っても、ゲリラなので軍服ではなく私服。
民間人とは、区別がつきにくい。
ある日、ゲリラのアジトを急襲した際は、全くの無差別発砲。
子供や、女でもお構い無く。
何故なら、此処では子供でも平気で、銃を撃ってくるし、売春婦のふりをしてベッドで、滅多刺しに殺された仲間も。
でも、これは流石の俺でも堪えた。
毎夜、俺が撃ち殺した奴らが、夢の中に。
なので契約を過ぎると、逃げるように日本へと。
相変わらず、日本の空気は弛みきってはいるが、物陰から発砲される心配は無い。
何の宛も無く歩いていると、背後から
「そこの闇にまみれた、人殺しの若造よ」と
俺は、ギョッとして振り返ると、年配の小汚ない乞食坊主が。
「お前さん、かなり闇の渦に包まれておるの」
俺は、坊主を睨み
「何が、言いたいんだ?」と
「お前さんは、生きながらにして無限地獄の業火に晒されておる」
「此の儘、業火に焼き付くされたいのか?」
俺は、鼻で笑って
「面白い事を言う、爺さんだな」
「俺が、無限地獄だと?」
「確かに俺は、人殺しだ」
「でも、合法的な戦場だからな!」
「坊主に、何が解るんだ?」
坊主は、ニヤリと笑い
「お前さんは、その地獄から逃げて来たんじゃろ」
「じゃが、業火に包まれたお前さんは、もう逃げられはせんよ」
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