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咲夜の後を追って部屋を出てから数分―
俺は長い廊下を咲夜から離れないようにゆっくりと歩いていた
俺と咲夜の二人は特に会話をするわけでもなく、ただ静かな空間が広がって居たが、不意に咲夜が歩きながら声をかけてきた
「―それにしてもあの時は焦ったわ…夜中、部屋で寝てたら急にドアを叩く音が聞こえてきたから何事かと思ってドアを開けたら、全身血塗れの"妹様"が立ってたから…本当に何事かと思ったわ」
咲夜はそう言ってから大きくため息をついていた
妹様というのは恐らくフランの事だろうーー俺はそれに対して特に何も言わず、ただ無言で咲夜の話に耳を傾けていた
「―私が何事かと尋ねたら『拓哉が!拓哉がぁ!』って言いながら私の手を引いて何処かに連れていこうとするから、そのままついていったら…地下室に血だらけの貴方が倒れてたのよ…」
咲夜はそう言葉を続けて、歩きながら俺の方を指差していた
フランが助けを呼んでくれたのかーー後でお礼を言っておかないとー…
そんなことを考えていると、俺はふと疑問に思っていたことを尋ねる
「―それじゃ…咲夜さんが俺を治療してくれたんですか…?」
俺の質問に対して、咲夜は少し悩んだ様な表情を浮かべていた
何か言いづらい事でもあるのだろうか―…
「―応急処置をしたのは私だけど…詳しい話はお嬢様に聞きなさい」
俺の疑問にそう答えると、咲夜は一際大きな扉の前で立ち止まっていた
どうやら、ここがその"お嬢様"の部屋みたいだ―…
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