プロローグの様な何か

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俺は化け猫である。名前はまだ無い。 ここがどこだかとんと見当がつかぬ。ただ、今は薄暗く湿ったところでみゃーみゃー鳴いているのがわかる。 さて、混乱したな。落ち着くんだ俺。どっかで見た文章みたくなってるぞ。 「しーくん……どうしよう……?」 そんな俺の上から妹が戸惑ったように呟く。 話は少し前まで遡る。 --------------------------------------- 放課後、俺こと草宮鎮(くさみやしずめ)は特に残る用事もないのでそそくさと下駄箱に向かう。 が、下駄箱に向いた瞬間、背後からとても嫌な気配。 「あっ、鎮(しずめ)!今日は一緒に帰れる?」 案の定、友達かつ迷惑極まりない存在、菅野瑞季(すがのみずき)がやって来た。 彼はまぁ、いわゆる典型的な主人公というやつである。立てば惚れられ座ればフラグ歩く姿で惚れさせる、と言ってもいいだろう。 成績優秀スポーツ万能男女平等僅かながらのオタ気質眉目秀麗才色兼備、常に女性がそばにいる。要するにリア充爆ぜろ要素をすべて兼ね備えた存在だ。 そんな彼がなぜ俺と仲いいかって?そんなもんこっちが聞きたいわ。たまたま俺と瑞季の波長があった程度でしかない。あとは俺が彼に微塵も嫉妬しないというくらいだろうか。 つまりわりと今風な軽い友人関係(向こうがどう思ってるか知らないが)なのだ。 俺はため息を吐きつつ、冷めた目を向ける。 「後ろのヒロインズがいないなら」 「……?」 「回れ~右」 瑞季が後ろを向くとまさに有象無象と形容出来るほどの女性陣。一クラスくらいいるかもしれない。多いにも程がある。 「えーっと……あのみんななんで殺気のこもった目で……?」 「頑張れ主人公~」 「ちょっ、鎮!?助けっ、ちょっみんな落ち」 ギャァァアアアアアア!!という叫びが背後から聞こえる。半分くらい日所茶飯事的なので他の連中もみんなスルーしている。 無論俺も無視だ。あれに付き合わされるほど茶番もあるまい。 「つーかいい加減主人公体質自覚しろよ……」 克服は無理だとわかっている。が、せめて自覚はして欲しい(主に俺の精神衛生上の問題で)。やつと男子の軋轢を減らすのになぜ俺が胃を痛めなきゃならんのだ。 そんなことを考えながら、まだ響く絶叫を背景に学校を後にする。 のんびりとさっきの風景を忘れ去って今日の授業を軽く復習しながらトコトコと歩き続けると、家と学校の中間辺りで見知った髪型背丈制服その他もろもろの女子が曲がり角から出てきた。
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