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深い溜息で小さい背中がより小さくなった姿がそこにはあった。
「ドコ、イッチャッタ......デスか......」
一階の階段下。
ククルは手に馴染んだ箒を手に、手すりによりかかるように天井を見上げる。
頭を悩ませる種はもちろん赤毛の少女のことーーーあの少年のこと。
昨日、自分の部屋に帰ってきて見たものはもぬけの殻になったベッド。まさか、あの赤毛も少年の仲間だった可能性がーーー
ククルは小動物のようにふるふると首を振って考えていることを整理しようとした。少年に千切られて失ってしまった銀汽笛の首飾りのあった胸元に手を当ててみる。
ククルの心の中にぽっかりとできた感情の穴。あの少年が捕まったという報告はまだない。そのことで多少なりともホッとしている自分がいる。
もう一度首を振る。
大窓から差し込んでくる朝日がククルの小麦色の滑らかな肌を映した。
「ククル・ヴィロード。何をサボっているのですか」
静かに足音を立てず階段を降りてきたのはメイド長のエトナ・バーレン。御歳七十三になる老メイドだが、背筋は鉄杭をいれたのごとく真っ直ぐ、その他人を射抜く鋭い眼光は衰えを知らない。
「モ、モウしワケありまセンッーーー」
寄りかかっていたまま慌てて体勢を整えようとしたので、手すりを滑るように尻餅をついた。
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