第一話 ペンは剣よりも強し、 されど銃口の切先には能わず

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なぜ朝はやってくるのだろう。 朝日がカーテンの隙間から漏れて、部屋に一筋の光線が伸び、ちょうど枕元にまで届いている。なんて忌々しい明るさなのだろうか。 いや、それはいい。 不服にも。 世界は、俺を中心に回ってるのではなく、地軸を中心に回っているらしいから、きっとそういうことなのだ。 俺が言いたいのはそういうことではない。 なぜ朝時間通りに起きて、時間通りに学校に通い、時間通りに食事をして、なぜこうも時間に縛られて生きなければいかないのか。 生物学的に言えば非常に不自然な現象である。ナンセンスだと言っていい。人間が作った時計が、今では人間を支配してしまっているとはよく言ったものだ。 皮肉にもこういう話がある。社会から外れて自由となったホームレスたちは、朝は日が昇ると同時に起き、日が沈む頃になると寝床につくというルーティーンにおちついてしまう。時計を手放した彼らの方が、自然的に規則正しく生活を送っている事実。 かくゆう俺も、旧市街にいた時はそうだった。朝は日が昇ると同時に起き、昼間は仕事があれば仕事をして、夜は本を読むために街灯を探して、眠たくなれば寝る。そして、日が昇るとまた目を覚ます。 時間の刻みに縛られないほど、生き物は時の流れに敏感となる。時計が十二時を差さなければ、昼飯もとれない文化人なんて今時珍しくない。
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