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その人物の両手にはナイフとフォーク。その口に、おそらく俺の朝ごはんだったであろうウィンナーがモソモソと現在進行形で飲み込まれていく。
つまりーーー
「あら、ダメじゃないミウ。ここまで食器を持ってきちゃ」
アリスがそう言って制服のポケットからハンカチを取り出すとミウの口元を拭いた。アリスの方が頭半分背が小さいので、見上げる形になっている。
バレてーらー。
「........なんでもう馴染んでんだよ」
俺のもっともな質問にアリスはふんっと鼻を鳴らすと、呆れた目をして「犬や猫じゃないんだから、隠し通せるわけがないじゃない、馬鹿ね」と言った。
当のミウ本人を見ると、スプーンの先を口にくわえるように眉をひそめて困った顔で「ごめん、なさい」......いや、犬や猫みたいなもんだろ、こいつ。
「追い出さないのか?」
「すでにあんたっていう犬の骨がいるんだから、一匹も二匹も変わらないわ」
さして問題ないという態度。
「驚かないのかよ」
「そりゃ驚いたわ。深夜に物音がすると思って廊下に出たら、寝惚けたこの子がそのまま私の部屋に飛び込んできたんだもの」
「............」
ミウの見えない尻尾がさらに垂れ下がってる。猫耳があったらぺたりと折れているだろう。
「じゃああれか? こいつはこの無駄に広い屋敷で、無駄に偶然的に、一番ばれたくない奴の部屋に、無駄にピンポイントに飛び込んだっていうのか?」
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