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アリスが感じたのは純粋な気の緩み。従順で大人しいと思っていたミウから向けられる言い知れぬ敵意に唖然とするほかない。
「ミウ、落ち着け。これはアリスがじゃれついているだけだ。子犬の甘噛みみたいなもんなんだ」
実際、仔犬というよりは狂犬なのだけど。
「......そう」
ミウはポツリと呟くように言うと、その持っていた足から静かに手を離す。思った以上に素直に従ったものだ。激昂して、放り投げるくるいはすると思ったのに。
「学習、した」
俺の視線に、眉一つ動かさないミウの瞳がドヤっと得意げに光る。うるせーよ。
体勢を崩したアリスはベッドに尻餅をつくと「あんたの知り合いってこんなのばかりなの?」と呆れながら、掴まれた方の脚をさすった。
俺の知り合い? アリスが知っているとするとミカヅキのことだろうか。
「同じ匂いがするわ」
嗅覚は犬並みである。まぁ俺の線からたどれば行き着くのは旧市街しかないか。
ミウは匂いという言葉に反応して、自らの身体を嗅ぎ始めた。
「匂、う?」
「大丈夫よ。昨日の晩、私がしっかりと洗ってあげたんだから」
アリスは身体を起こすと、姦しくミウの胸中にギュッと顔を埋めた。いやぁ姦しい。
「............」
なんて身じろぎもできずになすがまま、無表情のミウ。
それより洗ってあげたということは一緒にーーー
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