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「あの子、元貴族でしょ」
昼休み。
アリスの第一声。
俺は優雅に楽しんでいた紅茶を盛大に吹くと、その場で咳き込むように口元を拭った。
「あら、大変ですっ」
いち早く気付いたリオが手拭きを片手に近づいてきたので、俺は奪い取るようにそれを掴むと彼女を遠ざけるように手を無碍に振る。
「どうしてわかった?」
顔をテーブルに突っ伏してから、ゆっくりと顔を上げる。そこにはニヒルな笑みを浮かべたアリスの顔。
「あら、素直なのね。てっきり誤魔化すかと思ったわ」
「俺が否定したところで、アリス、お前がそう思ったならシロでもクロなんだろ?」
「少しは賢くなったのかしら」
アリスが俺を改めて値踏みするように視線を投げかけてくる。
「で、どうしてわかった?」
俺も再度視線の動きで確認。
「勘よ......と言いたいところだけれど、あの子を見てれば嫌でも気づくわ」
食器の使い方一つとっても、マナー、仕草、全てに教育を受けていた痕跡があった。
それにーーー
「あの子、シャンプーハットが無いと髪が洗えないのよ。まったく、どこのお嬢様かしら」
「名推理だな」
俺はもはや驚きを通り越して呆れた。確かに世間知らずのお嬢様って言われればそうかもしれない。
それはともかく、というアリスの前置き。
嫌な予感。
「あの子、高等区画に土地勘があるわね」
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