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校庭の広場から悲鳴が上がったのは、ちょうど俺とアリスが席を立った時だった。
「なんだ?」
複数の女生徒の声。水面を広がる波のように喧騒が伝わってくる。その後に呻くような男子生徒の大声が聞こえてきた。
「ずいぶん騒がしいな」
「ユキッ」
アリスが俺を向いた。なんだ、また俺に行けというのか。
俺の不服そうな顔に、アリスが剣幕をたてる。
「はいはい、行きゃーいいんだろ、行きゃー」
そう言っている間に食堂に数人の生徒が雪崩れ込んできた。
「た、助けてくれぇ!」
「何があった」
俺は転がる男子生徒の一人に近づいて声をかける。
「あれだよ! アイツが暴れてやがるっ!」
男子生徒が指差す先。食堂の扉は大きく開け放たれ、逃げ惑う生徒たちの奥に見えるのは血潮に染まった細い腕。その腕が女生徒の髪の毛を鷲掴みにして、渡り廊下の支柱に何度も何度も叩きつけている。足元に転がっている二人の生徒。
その細い腕の持ち主は、男子制服のワイシャツ姿。ただ目だけは何を見ているか分からないほど錯乱し、時折変な笑みを浮かべているのだ。
クスリか? 中毒症状なのか息が異常に荒い。
俺は仕方なしにそいつの元へ駆けつける手前、振り返って一部始終を傍観しているリオに向かって言う。
「お前は来なくていいのか?」
するとリオは「何のことでしょう?」 と朗らかな笑みを浮かべた。
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