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そいつは僕の顎を掴むと、値踏みするように気味の悪い笑みを浮かべた。
男の親指が僕の頬をなぞる。嫌悪感が全身を支配する。
でも力が入らない。
僕は足も満足に立たないまま腕を引っ張られた。容赦のないそれに腕が引き千切れると思った。
足元に倒れる父さんの頭からは紅い紅い血が流れている。
僕は何の感慨もなく動かなくなったそれをただ見下ろした。
理解する間も無く現状は流れるのだ。
連れて行かれたのは薄暗い路地裏だった。昼間でも日が届かないこの街でも特にここは危なげな空気を纏っている。
そこにあった雨水の溜まったドラム缶に頭ごと突っ込まれる。
「ーーーっ!」
声にならない喉からの訴え。
「おらよっ」
男の汚い手が僕の髪の毛と顔を乱暴に洗う。
直ぐに顔を持ち上げられると、地面に叩きつけられた。落ちていた瓦礫が背中に刺さる。
着ていたシャツに手をかけられたのが分かった。
これから行われることに知識がないわけではなかったが、しかし相手は男である。こちらも男だ。
なんで。
男の口からはだらしなく涎が垂れていた。
今まで味わったことのないような一つの恐怖。
無理やり上半身を裸にされると、僕の腰にまたがってヘソのあたりに手を当ててきた。それから這うように胸、肩、腕を撫で始める。
気持ち悪い。 男の興奮は増すばかりで息がさらに荒くなった。
「キレイな肌してるなぁ」
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