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助けてくれる人なんてもちろんいない。それどころか誰かがやってきて気晴らしに殺されかねない。
男がしたり顔で舌を出した。
まさか。
それが肌に触れた瞬間一気に緊張した。身体が硬直する。嫌悪が最大でおかしくなりそうだ。足が震える。涙が出てくる。
首筋を触れられた。
嫌だ。
肌の匂いを嗅いでくる。
嫌だ。
髪の毛を指で縋れる。
嫌だ。
意識が鮮明に生理的不快を発信する。
男の手が僕の下半身に移ろうとした。
僕は本能かズボンを抑える。
「おいおい、可愛いねぇ。優しくしてやるから」
男の中で僕はもう弱者でしかない。支配される側だ。
この世の定理。
でも、僕は死んじゃあいない。
男は自分の優位を確信しているからか、僕のズボンを掴んだ手を外そうとはしなかった。
時間をかけてたっぷりと楽しむつもりだ。
スボンの上から僕の太ももを撫でる。じっと我慢する。
僕は男に気づかれないように、ズボンのポケットの中のソレを手繰り寄せる。
今じゃない。
恐怖で縮こまっていればいい。
「お前の親父には散々世話になったからなぁ。たっぷり味わってやるぜ」
父さんへの復讐か。父さんは他人への暴力にも躊躇はない。近づく人間は殺し、物を奪うために殺し、そして気まぐれに殺す。
こいつもその被害者の一人なのだろう。
僕は目を閉じた。神経を集中させる。
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