第1章

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***** * * * * 私が出張から帰ってきた週の土曜日に愛未と会った。その時に彼氏と別れたと聞かされた。 しかも別れたのは私が出張中だったために私と会うこともできなくて、はけ口もなく辛かったそうだ。 この日は別れてから数日が経ったからか、幾分かマシになったと言っていた。 愛未の彼氏は大学時代から付き合っていた人で、大学でも人気者だった。かっこよくて話も面白く、モテていたと思う。 愛未も美人だから本当にお似合いだった。 「どうして別れることになったの?」 私は直球で気になることを聞いた。最近は2人が一緒にいるところを見てはいなかったけど、愛未から話を聞いている限りでは問題はないと感じていた。むしろラブラブだと思っていたほどだ。 「好かれている自信がないって言われた。 そしてフラれた。」 「え、愛未、ゆうやんにベタ惚れだったじゃん。何でそうなったわけ? 今からでも遅くないよ。ちゃんと好きだって伝えに行こうよ。」 ちょっと強めのカクテルを見つめながら愛未が、 「本当に好きだったのか自信がないのよ。 彼氏と言う名のアクセサリーが欲しかったんだろって言われた時に、正直言って反論できなかった。ああ、そうなのかもしれないって思ったの。」 そしてカクテルを口に含み、味わってからまた続ける。 「逆に言えば、裕也の方もそうだったんじゃないかな? それに好きだって言ってくれる人が好きなんじゃないかな…。 現に私、最近そんなこと口にも態度にも出してなかったと思う。」 「それで良いの?愛未は。」 「私も私のことを好きだって言ってくれる人が良い。私だけを見てくれる人が良い。 博貴さんはさ、あおいのことしか見えてないでしょ。私もそんな人が良い。 あおいが羨ましいよ。」 「愛未…。」 言葉が出てこなかった。 私は大事にされている自信があったし、私も博貴を大切に思っている。 そんな立場の私が何か言ったって、自慢にしか聞こえない気がした。
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