星ノ名

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ライ……という男は話を続けた この星の独裁政治を打破し 平等な世界を作るのが目標らしい だが、王家の力が予想以上に強かったので 簡単にはいかないことであった そこで、大臣の地位まで登り詰め あえて王家の近くに身を置き 好機を伺いながら過ごしてきたそうだ 「……それで、今回の戦争さ ぶっちゃけた話、王家の力も弱ってきている 私の仲間を次々と大臣にしては 政治をめちゃくちゃに動かしてきたからな」 「仲間も大臣なのか? それなのに、この戦争は止められなかったのか」 「あぁ、独裁政治の恐ろしさだよ 絶対的権力がこの星を覆っている限り どうする事もできないんだ だからこそ、私が打破する、そう決めたのだ」 ライは冷静に 時に感情的に訴えかけてきた 権力への抵抗 それはほとんどが 儚く散ってしまうものだ そして、その者達は 名を奪われ、歴史から消える それでも、抗わない限り 世界は変わらない 行動する事で初めて 突破口を見出だす事ができる 「……ライ、行こう 僕だって変革を求めてここに来たんだ 儚く散る覚悟も持った、だから戦おう」 それを聞いたライの口から歯が見えた 「……ありがとう、シン それでは、我が星の王女の所へ向かおう」 王女…… 「現在、王女自身も戦場に出ている状況だ 先ほども、私と共に行動していた つまり、私は王女を騙せる立場にいるんだ」 「騙す……騙すって?」 「簡単な事さ 挟み撃ちにしてやればいいんだ まず、私が所定の位置に王女を呼び出す そこにシン、君はいてほしい」 「おとり……って事か?」 「あぁ、そして私は 背後から王女を殺す、単純なのが一番なんだ」 それには納得出来る 初めて出会った相手と 複雑な作戦は遂行されにくいからな 「でも、どうやって誘き出すんだ?」 「そんなの簡単さ 『敵がいました、直ちに向かいましょう』と 急かしてやれば戦場では十分だ」 「焦っているからな……」 「そうだな、戦争を生き抜くには 冷静さが必要だと教えてやらなければならないな さぁ、作戦を実行しよう! 言っておくが、王女はただ者ではないから おとりであっても死ぬんじゃないぞ?」 最後に脅された……というよりは忠告か 小さくうなずいて、僕はその場で待機した
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