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照り付ける太陽が眩しい。
時折吹き付ける風は強いが、涼しさは微塵もない。
これが湿った風なら、雨雲を運んでくれる風なら、どんなに良かった事だろうか。
そう思いながら少年は手を翳し、街の向こうの砂漠を見る。
視線の先は、砂が巻き上げられて、黄色の世界が広がっている。
この国はこの街と周囲の砂漠、それとその先の小さな村からなる小さな国だ。
昔話では、交易の拠点として、凄く繁栄していたそうだが。
周囲が砂漠化した今では、此処は寂れた辺境の国となり、滅多に観光客も訪れない。
それもこれも、この地に住む者達の先祖が、資源を使い尽くし豊かな湧水を枯渇させ、当時は青々と茂っていた緑の草木をカラカラに乾かせて枯らしてしまったからだ。
しかも彼等は一部を此処に残し、無責任にも別の豊かな地を目指して旅立ってしまった。
少年を含むこの地に暮らす民は全て、その残された者達の末裔なのだ。
街を取り囲む防壁のお陰で、街の中は砂の侵食を許してはいない。
それがせめてもの救いだが、雨がもう随分と降っていないせいで、街の水瓶の中身はもう殆ど残ってはいない。
砂漠に囲まれたこの街で水不足は死活問題だ。
これでも王都だと言うのに。
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