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私たちは、まず過去の私たちにタイムマシンの組み立て方を教えなくては。
そいつは一体どういうことかと訝る周囲に、科学者はタイム・パラドックスについて語り出す。
つまり、私たちは未来の私たちにタイムマシンの作り方を教わったのです。しかしここで、私たちが過去の私たちにタイムマシンの作り方を教えないと、過去の私たちはこのタイムマシンを作ることができず、私たちの時空に繋がりません。つまり、私たちの時空が無かったことにされてしまうやもしれません。
なんだと、そいつは大変だ。と現代人は俄に騒ぎだし、このまま我々の時空を消失させてたまるかと名乗りをあげた技術者をタイムマシンへ押し込んで、未来人が被っていた目出し帽を無理矢理被らせ、よし行ってこい。と僅か数週間前の過去へと送り出した。
そうして技術者は未来人として過去人の前に姿を現し、タイムマシンの製造方法を丸ごとそのまま伝授して、無事ミッションを完遂した。
さぁ、これで我々の時空もひと安心だと一息吐いて、技術者は意気揚々とタイムマシンに乗り込んだ。その時、過去へ遡るタイムマシンの仕組みについて問われたものの、そこは正直に返答し、帰ったらあの頭のいい科学者にでも訊いてみようなどと考えてその時空を後にした。
さてこの場合、タイムマシンを作ったのは一体誰なんだろう。
フレックスとは、大抵そんな議論ばかりしていた。
◇
フレックスは青と白のストライプという至ってベーシックなカラーリングの、至って普通のプラスチック製ストローだ。ただ一点、喋ることを除けば。
そう、フレックスは喋るストローなのだ。
喋るからには段々とこのストローが人間に見えてくるもので、途中の蛇腹構造になっている部分は折り曲げ可能で角度も自在に変えられるから、僕はこの辺をフレックスの首として認識している。当然、顔の方が胴体に比べて短い。
僕は最初、彼をストローマンと呼んでみた。それはまぁ仕方のないことではあって、なぜならその時の僕はまだフレックスの名前を知らかったからだ。
が、フレックスはこの呼び名が気に入らなかったらしく、やたらこっぴどく叱られた。ストローに説教を食らう十六歳というのも珍しい。
けれど僕の方には悪気なんてものはこれっぽっちもなくて、蜘蛛男ならばスパイダーマン、蝙蝠男ならばバットマン、ウルトラマンとスーパーマンでは果たしてどちらが「超人」の英訳に相応しいかは計りかねるが、まぁ要するにそういうことだ。
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