【1】 邂逅

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何時までも続いてほしいと願った日々は、ある日唐突に終わりを告げた。 町内会を通じ、ある布告が出された。 各家庭の飼い犬を拠出せよというものだった。 軍用犬として働かされるのではない、毛皮を衣類として利用するためだった。国民として大切な義務を果たせというわけだ。 各家庭から金目のものが集められ、物資の足しにと指定された作物の栽培が奨励された。庭先にたくさん植物を植えた。育てた、刈り取った。 全部守った、けど! コロを持って行かれるのはイヤ! 「お父さん、お願い、コロと連れて行かさないで!」 少女は必死になって訴えた。 けれど、子供の願いが聞き届けられることはない。 近所の犬と一緒にコロも一所に集められ、野原家から姿を消した。 無駄吠えしないようにいつも言い含められていた、その言いつけを守り、他の犬が怯えて吠える中、一匹だけおとなしく座って尻尾を振っていたと人伝に聞いた。 いつでも話を聞くよ、という目で彼女を見、その日起きたことを聞いてくれたコロはもういない。 空になった木箱を前に、幸子は何時までも号泣した。
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