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キーンコーンカーン
予鈴だ。そのすぐ後に先生らしき人が姿を表す。
「はい、朝のST始めるぞ。その前に……高津!それと伊乃上、分かってると思うが今日放課後ここに残るよう」
この人が一斗の言っていた佐々木先生。目は鋭くキリッとした顔立ち、いかにも厳しそうな風情だ。しかし、どこか舞花に似ている気がするのは……まぁ置いておこう。
「はいはい、分かってますよ。ささきせんせ」
「分かってるなら良いがなんだその態度は」
「すみませんね」
キッと舞花が佐々木を睨んだ。すると佐々木も睨み返す。よくこんな怖い奴と睨み合えるものだ。舞花は案外根性があるのかもしれない。
「まぁいい。お前にはとっておきの問題を用意しておいてやる」
「どうもありがとうございます。楽しみにしてますね」
言葉は丁寧だが喧嘩を売ってるのは明白だ。
「高津も、忘れんじゃねぇぞ」
「はーい」
「じゃあ遅くなったがSTを再開する。今日は……」
やっとSTが再開し教室の雰囲気も穏やかに戻った。が、舞花の周りだけは黒いオーラで覆われていた。
「全く、お前も相変わらず佐々木先生とは犬猿の中だな」
舞花の隣りの席である一斗は舞花に向かって飽きれたようにそう言った。
「うっさい!仕方ないでしょ、昔からこうなのよ」
その意味はまだ分からないが、今はそれで良しとしよう。
*
「はぁ……せっかく授業終わったのにこんなのってありー」
放課後、舞花は自クラスで一枚のプリントを眺め溜め息をついていた。クラスには一斗と春樹、佐々木、そして千里がいた。
居残りメンバープラス先生というのは分かるが、なぜ一斗まで?
「うだうだ言ってないではやく解け」
「分かってるよ」
「ったく。悪かったな、武藤。こんなんに付き合わせて」
佐々木は一斗に向かって話しかけた。どうやら一斗の姓は武藤と言うらしく、また居残りにも佐々木に頼まれて付き合っているだけのようだ。
「いえ、大丈夫です」
一斗はそう静かに答えた。
千里と舞花はもう問題に取り掛かっている。しかし春樹だけがペン回しをして名前を書くこと以外何一つ進んでいない。
「全く分かんねー」
さっきから仕切りにそう呟いている。
良く見ると、千里と舞花達の問題が違うのは分かるが舞花と春樹も全然違った。しかも舞花のは春樹と比べ一段と難しそうだ。しかし最も進んでいるのも舞花だった。
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