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舞花も冷静になってやっと気付いたのか口を押さえて固まっている。
教室はしーんとした空気に包まれた。
いや、元々舞花のあのセリフ以来皆固まっていたのだが、二人の間だけは燃え上がっていて気が付かなかったのだ。
少しして、春樹が声を上げる。
「えっと、その……。兄さんってどゆこと? ってか、えっ! 二人とも血が繋がってんの!?」
佐々木と一斗はほとんど同時に溜め息をついた。答えるのは佐々木だ。
「はぁ、俺と舞花は……従兄弟同士だ」
一瞬時が止まった。いや違う、凍り付いた。
再び春樹が口を開き声を荒げる。
「えっ、えっ! マジ? ってか一斗知ってたの!」
「まぁ……舞花とは物心ついた時からの幼馴染みだし」
「しまったぁ……」
と呟いたのは舞花である。一斗の背中で頭を抱えている。
「今更弁解の余地なんてないし、諦めろ。舞花が先に暴露したんだからな」
一斗は冷静に舞花を宥めた。舞花は今までとは違う別の黒いオーラを纏ったまま動かなくなる。
「ほっとけ。それより高津と葉月は問題進んだのか」
佐々木が鋭く春樹を見据える。これは全く出来てないと分かっていてわざと聞いたのだろう。千里はというと、後一問だけ解けず苦戦しているようだ。
「おい伊乃上! そんなとこで丸まってないで葉月に解き方教えてやれ。武藤は高津を頼む」
「分かりました」
一斗は立ち上がると後ろにいた舞花を立たせた。
「ごめん……」
「いいから早く葉月のとこに行け」
二人はそれぞれに目的の人を目指す。
それから数分、舞花が千里に解き方を指南する姿は教師顔負けで、千里もみるみるうちに残り一問を解き進めていった。
「出来ました!」
千里はニッコリ笑顔で佐々木の元にプリントを持っていく。
それを受け取り佐々木は丸つけを始める。
結果は全問正解。舞花が持っていく前に、合っているかどうか全て確かめたのもあるのだろうが、元々丁寧に正確に問題を解くタイプなので舞花も安心していた。少し時間が掛かるのがたまに傷だが。
「残るは高津、お前だけだぞ」
佐々木は隠そうともせず圧力をかける。
武藤が側について解けた問題は約二問。後二十問近く残っている。
「これは遅くなりそうだな……。武藤、葉月、お前達はもう帰れ。後は俺らでどうにかする。早く荷物をまとめろ」
「いいんですか?」
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