第四話 思いは何処へ向かう

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 そっとドアを開け廊下に出てすぐドアを閉める。 「良いのですか?」  看護師は問い掛けた。舞花は今にも泣きそうな微笑みではいと答えた。 「先生のお話、伺いますか?」 「いえ、それはまた兄と来たときに」  兄と聞いて看護師が不思議そうな顔をしたので従兄弟ですけどと付け加えた。 「あの方ですか、しっかりしていらっしゃってビックリしました」 「兄は自慢の兄ですから」 「ですね、良いお兄さんです。ではまた、いつでもいらしてください。お待ちしております」  舞花は深く頭を下げる。 「今日はありがとうございました。看護師さんがドアの外にずっといてくれたの、すごく嬉しかったです」  看護師が手を振ったので舞花も振り返し、見送られるまま自動ドアを潜り抜けた。 「あちゃー、雨降ってきましたねぇ。まぁ今の私にはちょうど良いかも」  泣いてもばれなさそうだし。とは言わないが、思ってることには間違いない。 「濡れて帰るのもたまには悪くないよね。後で兄さんに怒られるだろうけど……のんびり帰ろう」  駐輪場から自転車を取り出し、鞄を籠に突っ込むとハンドルを握りゆっくりと引いた。乗ろうとはしない。引いて帰るつもりだろう。  雨はさらに激しさを増した。  * 「舞花……何で勝手に抜け出すんだ」  佐々木と武藤は雨の降る中、傘をさしながら必死に舞花を探した。それも、学校から病院までの道程だ。佐々木は気付いていた、何処へ何をしに行ったのかを。だからこそ心配で、また昨日の事件のことも気にかかっていた。 「くそっ、何ですぐ気付かなかった。あいつから目を離すべきじゃなかったのに」  それは武藤も思っていることで、しかし口にはしない。慰め、そんなものは自分も佐々木も傷つけるだけだと分かっている。ただ無言で舞花の姿を探した。 「悪かったな、付き合わせて」  佐々木は武藤に向けて言う。しかし目線は真っ直ぐ前だ。武藤も決して佐々木の方を見たりしない。 「いえ、むしろ俺に付き合わせてくれて感謝してます」 「そうか……よろしく頼む」  互いに顔を見ずにの会話。それでも、舞花を想う気持ちは通じていた。  * 「流石に寒い……もうすぐ夏だからってもろ雨に濡れるのはまずかったかな」
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