第四話 思いは何処へ向かう

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 舞花を探し、走っていた佐々木が急に足を止め左方向を凝視した。武藤がどうかしましたかと尋ねる前に佐々木はそっちに走り出していた。一言、こっちだと呟いて。  佐々木は今までにないほど速く走った。武藤も必死に追いすがるが姿はどんどん小さくなっていく。佐々木が進んだのは本来の病院まで行く道とは全く別方向だったが、武藤も疑いはしなかった。佐々木が何かに気付き、そっちに舞花がいるという事実に変わりはないと信じきっていた。  舞花は今、ベストの掴まれていた。少しずつが好きらしい男は焦れったいほどゆっくりと舞花のベストを引き上げていく。  舞花は何もしないし何も言わない。意味がないと悟ったのだ。されるがまま、されるしかないのだと。そして、男の手が胸の一歩手前まできた時だった。 「そいつを離せ」  地を唸らせ、空を喚かせるように低く響く声が聞こえた。その時ちょうど雷が光った。男の姿はシルエットとなりそこへ映し出された。その時点で、それは誰なのか舞花は理解した。  ……兄さん! 「聞こえなかったか? そいつを離せと言ったんだ、早く」  佐々木は一歩一歩丁寧に踏み込み近付いてくる。その瞳は見るもの全てをいぬくように鋭く光る。普通なら見ただけで足が竦む。  男は慌てて声を出した。 「お前ら何やってる! 早くこいつを……」  言いかけて気付いたらしい。お前らに値する下っ端の男達がすでに全滅していることに。その場に立っている全員の男の額を冷や汗が流れる。雨と混ざって消えていく。  男は驚き舞花から手を離した。その瞬間佐々木は羽交締めをしていた男に鋭い蹴りを食らわす。腕は緩んで舞花が解放された。舞花がそのまま前に倒れ込むのを佐々木はキャッチした。 「大丈夫か」 「まぁ……ね」  舞花は何とか自力で立って佐々木の背中を押した。 「残ってるのは全員幹部、油断しないでよ。どうせ全滅させる気なんでしょ」 「よく分かってるな。忠告ありがとよ」  佐々木は構えをとったのも分からないくらい素早い動きで幹部を次々と戦闘不能にさせていく。美しい、その動きは正に夜叉。無駄なく人を沈める姿は人間技には思えなかった。  そして最後、一番逃げ惑った、確かこいつはリーダーだった。 「ひぃ! すみませんでした、許して……こいつがどうなってもいいのか!」 「舞花危ないっ」
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