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「良いも悪いもあるか、あんまり生徒を遅くまで残して事件でもあったらこっちの責任になるんだよ」
武藤は渋々片付けを始めた。千里も申し訳なさそうにしている。きっと二人を残して自分だけ帰るのは悪いなと思っているのだろう。しかし佐々木にああ言われては従うしかない。
「じゃあ私先に帰るね。舞花ちゃんまたね、春樹君頑張ってね」
「うん! 気をつけてね」
舞花は笑顔で手を振った。しかし春樹は涙目で助けを求めている。さしずめ、こんな鬼みたいな二人と一緒に残されて問題を解くなんて嫌だ、といったところか。
「一斗、ちゃんと千里を送っていってあげてよ。こんな可愛い子一人で夜道なんてありえないから」
「分かってる。じゃあまた来週」
「ん、今度は遅刻しないよう努力するよ」
そして一斗と千里は廊下へと姿を消した。
「さぁ春樹君。私も早く帰りたいんだよ……分かってるよね? 今からはビシバシいくから」
現在時刻は六時半。とっくに下校時刻は過ぎている。
「ほらボーとしてないで早く解け」
二人の鬼に急かされて春樹は泣く泣く問題に取り組む。しかし分からない!
「あの……全く分らないのですが」
恐る恐る鬼の顔を伺う。すると鬼は全く同時に溜め息をつき、一瞬にして鬼の顔から教師の顔に変わった。まぁ舞花は教師ではないのだが。
「しかたねぇなぁ。一回しか言わないからよく聞いておけ。これはな……」
佐々木が説明をし舞花がアトバイスをする。良いコンビだ。
その良いコンビに教えられ、やっと全ての問題を解き終わった頃には、既に八時を回っていた。
「流石に外も真っ暗だし時間も遅いしな……」
佐々木は丸つけを無事終え、窓の外を見て呟いた。
「仕方ねぇ、お前らさっさと片付けろ。帰りは家まで俺が送ってやる」
「えっ、佐々木先生って」
「車だよ。兄さん家は自転車で来れないこともないけど結構遠いから車でここまで来てるんだ」
「へー」
「舞花! 学校でその呼び方をするな」
舞花はえへっと笑って見せる。
「いいじゃない、どうせ誰も聞いてないんだし、兄さんだって私のこと舞花って呼んでるし」
佐々木は言われて気がついたのか少し苦い顔をしながら声を荒げる。
「分かった、その話はもう良いから早く帰るぞ」
自分の鞄を手に掛け、さっさと教室を出ていく佐々木に、舞花と春樹ついていった。
「佐々木先生の車って以外と大きいんですね」
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