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「けれどもう帰った方がいいですよ。佐々木先生、伊乃上さんは頼みました。私はちょっと職員に用があるので失礼します。葉月さんも、部活に戻った方がいいのでは?」
「あ、はいっ! 失礼します」
千里は少し心配そうに舞花に手を振る、その目はまだほのかに赤い。舞花は保健室から出ようとするその背中に声をかけた。
「千里、心配するんな! 明日にはいつも通り元気になってるよ」
千里ドアを潜り抜ける瞬間舞花を振り向いてニコッと笑い、廊下に消えた。その後すぐに松島もお大事にと言い残して保健室から消える。
室内は急に静かになった。舞花は少しためらいながら口を開く。
「さっきの松島先生のセリフ……佐々木先生はどうとらえた?」
「どうもこうも、そのまんまだろ。あんなの……舞花を家まで連れ帰って、そのまま俺も休めって言ってるようなもんだ。たく、あの人はお節介なんだから」
「でもいいの? 兄さん」
佐々木はなにが?と不機嫌そうに尋ね返す。
「状況説明とかその他もろもろ……色々仕事があるんじゃないの」
「あるだろうな」
「だったらぁ……いてっ。なぜにぶつ」
舞花は佐々木にぶたれたところを押さえた。もちろん佐々木も本気ではないので痛がっているのは舞花の演技だろう。
「お前はなぁ、俺のこと気にかけてる暇があったら自分のこと心配しろ! この病人まがいが」
「だって兄さんのこと好きだもん。悪い?」
はぁーと大きく溜め息吐いたのは佐々木だ。どうやら飽きれているみたいだ。そんな彼を舞花はじーっと見つめている。もしかしたら試しているのかもしれない。
「悪い、非常に悪質だ。お前はここがどこだか理解してるのか?」
「学校の保健室」
「あぁそうだろうよ、なら分かれ。お前は阿呆じゃなかったよな」
コクリと頷く。
「けど、ここがどこだろうと私には関係ないもん」
「俺には関係ある」
「そんなこと私の知る範囲じゃない。私はどうせ馬・鹿ですから」
「誰がそんなことを」
「佐々木先生が過去私に何度か言ったことがあります。自分の言ったことに責任取れないようじゃ先生失格ですね」
「ならお前は取れるのか?」
舞花はまた頷いた。その瞳は真っ直ぐ佐々木だけを捉えている。まるでそれ以外なにも興味がないように、ただそれだけに集中する。
佐々木も舞花の視線をしっかり受け止めて逃げようとはしない。とても力強く勇敢な面持ち。
「本当だな?」
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