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また同時に鈍く引っ掛かることもあった。
舞花は、佐々木先生を選んだ。超えることは出来るのか?
顔には決して出さないが、一斗は今非常に苦い思いを抱えている。それを打ち消すためにも、今は剣に集中したいのかもしれない。
*
家に帰るまで、二人は必要最低限の会話しかしなかった。舞花は少し眠たそうで、必死に我慢していたが車に乗るとすぐに寝てしまった。
家に着いたが舞花に起きる様子はなく、佐々木はおぶって部屋まで連れていき、そのままベッドに寝かせた。熱は少し上がっているようで、顔もほんのり赤かった。
夕飯は舞花も楽に食べれそうなお粥にしたところは気が利くというか、やっぱり佐々木は優しい。
午後八時頃、舞花は目を覚ました。ほんのりと香る食べ物の匂いに誘われダイニングに行くと、そこにはお風呂上がりなのか髪がまだ濡れている。佐々木の姿があった。
「兄さん、おはよ」
「おお、おはよ。夕飯、食べるか?」
「うん……少しだけ食べたい」
佐々木ははキッチンに移り鍋に火をかける。
「すぐ温まるから座って待ってろ」
舞花はゆっくりと頷いてダイニングの椅子に座る。ふと額に手をあてるとひやりとした。冷えピタだ、佐々木が貼ってくれたのだろう。
「出来たぞ。熱いからゆっくり食べろよ」
「いただきます。兄さんはもう食べたの?」
「あぁ、俺は先にな」
舞花は黙々とご飯を口に運んだ。スプーンに少しすくって、ふぅーふぅーと息を吹き掛け、ゆっくりと口に含み噛み締める。一杯分を食べきって舞花はごちそうさまをする。いつもよりだいぶ小食なのはやはり熱のせいだろう。
「美味しかった。ありがとう兄さん」
「どう致しまして。体、だるくないか?」
うーんと首を捻る。瞳が遠くを見つめる。ぼーっしていて、まだ顔も赤い。佐々木は舞花の首筋に触れる。熱い。
「まだ熱があるな。今日、風呂に入るのはめとけ。体操服じゃ寝にくいだろ、寝間着に着替えたらさっさと寝ろ。明日葉月に元気な顔見せるんだろ」
「うん、そうだね……」
立ち上がり食器を片付けようとする舞花を佐々木は慌てて制した。
「それは俺がやるから」
舞花を支えて部屋まで連れて行く。
「着替えたら呼べよ?」
舞花はぼーっとしていたが話は聞いているらしく頭を縦に動かした。まだ佐々木がいるにも関わらず服を脱ごうとするので慌てて部屋を出る。
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