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「理由はそんなわけだから、くだらなさすぎて言えなかったの」
一斗は何も言わない。そんな一斗は無視してまた春樹に視線を戻す。
「春樹、勉強教えてあげるから元気だしな。よぉーし特別に何か一つ言うこと聞いてやろう」
「ほんとか!!」
舞花はしまったと思った。可愛くて小さなものを見るとつい甘やかしてしまう癖が出てしまったのだ。
「はぁー、悔しいけど仕方ない。一つだけだよ」
「おう。テスト終わってすぐの家庭学習日、買い物に付き合ってくれ」
「買い物? あぁ千里の誕生日プレゼントね。そういえばテスト終わった翌週の休日が誕生日か。それはもう家庭学習日しか買いに行けないよなぁ」
舞花は一人で納得し苦笑する。
「去年も一緒に行ったよね、いい加減自分で買ってみたら? 千里の好きなものとか大体分かってるでしょ。それに、彼氏から貰ったものは何でも嬉しいものよ」
あぁやっぱり春樹と千里は付き合っているのか。とそんなことはさておき、春樹がさっき以上にしおれている。
「そうかもしれないけど……一人で女らしいもの買いに行くのって凄く勇気いるんだよ! いてくれるだけでいいからさー」
「分かった分かった。今回は私が言うこと聞いてあげるって言っちゃったからしかたないけど、来年は頑張ってよ? 色々アドバイスしてあげるからさ」
「ありがとうございます!」
春樹はキラキラとした瞳で舞花を崇める。そんな春樹の視線をかわして舞花は呟く。
「また男装かぁ……それも面白いからいいかな」
「えっ、またお前男装するのかよ。目立つからやめて欲しいんだけど」
「女のままの方が目立つと思うよ。それに、もしこの学校の人に見られたら色々面倒じゃない。春樹も変な噂立つの嫌でしょ?」
「それもそうか。けどお前、また逆ナンされたり……」
「するかもね」
舞花はあっさりと肯定して微笑んだ。そんな舞花に春樹は少しおののいて、こいつはこういう奴だと思い返す。
「あ、予鈴鳴る。席戻った方がいいよ」
「そうだな……今日から勉強教えてくれよ。部活もテスト休みだし」
「分かってるって。私掃除当番だから図書室のいつもの場所とっといてよ」
「了解」
軽く手を振って自席に春樹は戻っていった。すぐに予鈴が鳴って佐々木が教室に入って来る。教師の顔だ。
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