第五話 小さな幸せと果てなき想い

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 舞花は肘で春樹の脇腹を鋭く突いた。うっと鈍い呻き声が春樹の口から漏れる。 「なにすんだよ舞花、痛いじゃないか」 「あんたが図書館で眠るからいけないんだろ。分かんないところあるなら聞くよって言ってるじゃない」 「あ、いやぁ、取りあえず数学のノルマは終わったからちょっと休憩って思って」  舞花は春樹の肩に手を乗せて首を振った。千里も困った笑顔を見せている。全く、といった感じだろう。 「春樹、千里を見習いなさい。千里は休憩しないで次のやるべきことをやっているでしょう? 別に休憩するなとは言わないけど一時間くらいは集中しな。そんなんじゃテスト中もたないよ」 「……はい、すみませんでした」  春樹はしおれてしまい、そんな春樹を見兼ねて舞花は仕方ないなぁと呟いた。 「春樹、今から図書館の閉館時間まで勉強を頑張ったら特別に今私がまとめているノート貸してあげる。どう、良い条件だと思わない?」  春樹は急に元気になって勉強を始めた。素直と言えば素直だが、単純と言えば単純だ。舞花は苦笑し千里に向き直った。 「それで、千里は何の質問?」 「あ、私は、英語が聞きたくて」 「どれどれ……」  そんなこんなで舞花は二人に色々なことを教えつつ、自分もしっかりと勉強を進めた。 『館内の生徒にお知らせします。後十分で図書館は閉館します。まだ手続きの終わっていない本を持っている人は、至急カウンターに来て下さい。まもなくー』  館内放送が流れ、生徒はそれぞれに片付けを始めた。舞花も教科書から顔を上げる。 「もうこんな時間か、二人とも出来た?」 「舞花! 俺は頑張ったぞ、だから」 「はいはい、約束のもの。あんたが唯一点数の取れる社会をより分かりやすくより完結にまとめてみました。これを理解すれば満点は無理でもイイとこいけると思うよ」 「ありがとうございます。舞花様様だな」  満足そうに舞花のノートを鞄にしまった春樹はあることに気がついた。 「千里、元気ないな。どうかしたのか?」 「いやその……テストに自信が持てなくて、大丈夫かなって凄く不安になっちゃって」  千里はさらに俯き今にも泣き出しそうだ。どうしようかと春樹が慌てる中、舞花は冷静に千里を見つめる。
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