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室内は荒れに荒れ、元の形を残しているものはない。そして……脇腹をナイフでさされた舞花の父に机の角で思い切り頭を打ち血を流して倒れている母。
「と、取りあえず一一九だ」
佐々木はなるべく冷静になろうと努力し、鞄から携帯を取り出した。
「もしもし、はい、はい、血を流して倒れて…」
一部始終を伝え電話を切った佐々木は自分の上着が引っ張られていることに気がついた。もちろん引っ張っているのは舞花だ。
「今救急車呼んだからな」
安心させるつもりで言ったのだろうが、舞花は何故か震え出した。
「兄さん……」
「ん?」
「いてくれて……あり、がと」
ふっと電池が切れたように舞花は後ろに倒れそうになる。
「危なっ」
そんな舞花に佐々木は反射で腕を出し体を支える。
「こんな状況でありがとうとか言えるなんて……何て女だよ、舞華」
佐々木は再び携帯を操作し、一一〇と打ってコールをした。
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