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何十時間もぼやけた暗い天井を眺めていた。この空間にいる限り、それ以外にできることは何も無かった。誰も何もさせてはくれなかった。
数時間後には、また闇に覆われて何も見えなくなった。今が何時何分なのか、もう知る術は無かった。
突然、止まりかけていた時が再び流れ出す。
「獄中生活はどうだった?」
破壊と崩壊の入り混じる音。ボロボロと障壁が砕けていく騒音の中で、微かに笑い声がする。と同時に、一つの影が姿を現した。俺はもう知っていた。…シナガミ、君なんだろ?
「アタシ、まだ生きなきゃいけないの。だから助けて」
「そうか」
「キミは死ぬんでしょ?死のうとしてるんでしょ?なら、アタシがちゃんと連れてってあげる。だから手伝って欲しいの」
「俺は一人で死ねる。君に殺されずとも」
「そうじゃない。キミはちゃんとキミ自身の手で死ぬの。でも、今のままだとキミは死ねない。だってキミは一人で死を選べないから」
「・・・」
「アタシも知ってるんだよ?未来のキミのこと」
「...俺は君のために何をしてあげられる?」
「死。それだけ」
「...なら、君は俺のために何ができる?」
「キミが望むならなんでも...なんてね」
彼女はまた小さく笑った。
「〈past〉と〈future〉に会いに行こう。キミはそこで真実を知るの」
今、何となく君のことがわかったよ、シナガミ。
俺はどうやら真実を知る必要があるみたいだ。
「ああ、そうするよ」
ごめん、香代。そっちの世界に行くのはもう少し先になりそうだ。
これが終わったら、すぐに行く...。だから少しだけ待っていて欲しい。
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