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美樹は仕方なく奈々香に付き合うことにした。
どうせアフターファイブも、飲みに行く相手もいなければ、遊んでくれる彼氏もいないのだ。
電車代は奈々香に払わせて、目的地の駅に着いたのは午後五時半を少し回ったところだった。
もうかなり日が落ちて薄暗い。
駅の北口から出て商店街を抜けると、住宅街に街並みが変わった。
「ねぇ」
美樹が奈々香に声をかける。
「ん?」
「そういえばさぁ……」
「何?」
「一昨年ストーカー殺人があったのって、確かこの辺りだよね?」
「えっ!」
突然怖いことを言われたので、奈々香は声を上げた。
「ほら、アパートに訪ねてきた友達が、押し入れの中で殺されてる女の子を見つけたって……」
そう言われると、そんな事件があった。
「しかもさぁ、その時にワイドショーで、この辺りで数年のうちにストーカー事件が頻繁に起こってるって話題になったじゃん」
「そう言われれば、確かに……」
「奈々香の友だち、よくここらに住む気になったよね」
美樹は顔を引きつらせた。
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