消失

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「マ、マスター!?」 俺の突然の異変に、リコが叫んでいた。 「くっ……!」 なんだ……!? 体がめちゃくちゃ怠い。 いや、怠いどころじゃない。 頭痛が酷い。 気分も悪い。 吐き気がする。 関節が痛い。 風邪でも引いたのか? それも、熱が40度近くはある規模の症状だ。 「ハァ……ハァ……」 息が詰まる。 俺は歩く事ができなくなり、その場に倒れてしまった。 「マスター!! 大丈夫ですか!? しっかりして下さい!!」 リコは、何度も呼びかけてくる。 大丈夫じゃねぇよ。 見りゃ分かるだろ。 くそっ……! 今の状態は芳しくない。 取り敢えず、こんな事になっている原因を明確にする為、俺はリコに診察を依頼した。 「これが、大丈夫に見えるのか? 死にそうに怠いんだ 俺を診てくれ」 「は、はい!」 俺の頼みを了承したリコは、しばらくの間俺を診察していた。 が。 リコから伝えられた診察結果は、意外な事だった。 「マスターの体に異常は診られません 病原体の侵入、アレルギー反応、何らかの発作 どの可能性も鑑みて診察してみましたが、全て正常値ですよ」 は? そんな訳あるか。 現にめちゃくちゃ怠いんだぞ? 少なくとも、俺の体が正常である筈は決してない。 「それはおかしい もう一度詳しく調べてみてくれよ」 俺が再診を依頼すると、リコはそれに従わず、代わりにとある可能性を指摘した。 「マスター…… 私の科学的調査に抜かりはありません ただ…… 科学で判断できない要因が、マスターを苦しめているとすると……」 ん? 科学的根拠が介入しない要因だと? …………。 なるほどな。 リコが言いたい事は理解できた。 そして、それを俺も納得していた。 今、俺の体に起きている異変。 それは、"闇術"を酷使し過ぎた事による反動だろう……。 それも、"闇術"『吸精』の影響が大きいと思う。 チート級の術だと思っていたが、こんな代償があったとは。 そうそううまい話なんて、あるもんじゃねぇな。 チッ……! しかし、どうするかな……。 こんな体じゃあ、歩く事もままならねぇ。 俺が途方に暮れている時。 悪い事というのは、続くもので……。 「マスター!! 大変です!! 前方、約20mに熱反応あり!! 魔物の出現を確認しました!!」 リコが突然そう叫んだ。 …………。 マジか、おい。
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