真実

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今一度、ダグ・フェルゼンについて、ミリアに聞いておくか。 事前に情報を得る事は、大事だからな。 「ダグ・フェルゼンは今、何をしているんだ?」 「"ラロ遺跡"を調査しておる筈だ 拠点地はウルバキアだがな」 「"ラロ遺跡"っていうのは…… 確か100年ぐらい前に滅んだ村だったか?」 珍しい魔術を扱う民衆が住んでいた、と以前ウォーレンが言っていたのを、俺は思い出していた。 なんでも、その珍しい魔術の一つ"修復"を使って、太古の物体を蘇らせようとしたとか。 結果的に、それが神ニルヴァーナの怒りを買い、滅んだ原因と言われている。 「そうだ ダグは、そこから出土した物体を調べていてな 嬉々としてその事を話してくる まぁ、その物体は私にはただの鉄くずにしか見えなかったがな 興味もないから、話もよく聞いておらぬのだ」 あー。 なんか、2人の会話が目に浮かぶ様だ。 ダグ・フェルゼンの専門的な話を、理解できず鬱陶しがるミリアの姿が。 まぁ、ダグ・フェルゼンについて、だいたいの現状は分かったかな。 会話が終了し。 「では、明日に備えてそろそろ寝た方がよいかな」 ミリアがそう言ってきた。 え? 今、何時だ? 洞窟の中なので、昼か夜かも分からなかった。 ついでに言えば、俺は2日間意識を失っていた身だ。 正確な時刻など、分かる筈もなかった。 「もしかして今って、夜なのか?」 俺は確認してみる。 「何を言っておる? 今は深夜だぞ?」 ミリアの言葉で、ようやく時刻が把握できた。 おう、マジか。 でも……。 「2日間意識がなかったんだ 全然、眠くない」 「ならば、篝火はつけておこう その灯りで、暇を潰すがよい 鍋の中身は食ってもよいぞ」 ミリアは気を利かせてくれた。 「済まないな」 その鍋の中で煮えたぎっているドロドロした液体か個体か分からないものは、絶対に食わないがな。 「では、私は寝るよ 久々に沢山話をして、疲れたみたいだ」 「あぁ、お休み」 言った後、ミリアは直ぐそこに横になると、体を丸めて眠りだした。 そこで寝るのかよ。 近ぇよ。 でだ。 俺はミリアが起きるまで暇な訳だが……。 何か暇潰しはないか? そう思いながら、俺は自分のポーチを漁ってみる。 すると、手に感触を覚えた。 なんだ? 手探りで、それを取り出してみる。 それは本だった。 そのタイトル、『翼の神』。
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