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ページ数の割には、話は短かったな。
流石に、子供向けといったところか。
絵本らしく挿し絵がメインで、文字は大きな書体だ。
なんか、ガキの頃によく読んだ絵本を思い出した。
それよりも、肝心なのは内容だ。
まとめると……。
昔の世界には、"ヤミビト"と呼ばれる悪人が蔓延っていた。
それを、神ニルヴァーナが一掃。
世界は、平和になりました。
めでたしめでたし。
……こんな感じか?
まぁ、"面白いか"と言われたら、特段に傑作だとは言えない。
勧善懲悪など、世間に出回るありきたりな物語だ。
読む限り、ノエルがあれほど推していた理由もよく分からない。
恐らく、幼き日に読んだ『翼の神』の内容に思い出補正がかかり、ノエルにとって他人に勧めたいほどの本になっていたんだろう。
まぁ、それはよいのだが……。
この内容……。
何か……。
何か、俺にとって重要な事に関係がある気がしないでもない。
そう。
これはまるで……。
まるで……。
そこまで思った時。
いや!
いやいやいや!!
ないない!!
そんな筈は、決してない!!
俺は首を横に降り、自分の考えを否定した。
その考えに行き着く事を、恐れていたからだ。
その時。
「マスター……
この内容、まるで――」
リコも『翼の神』を読んでいたのか。
だがな。
要らない事は言うな。
「リコ、それ以上言うな」
俺はリコの発言を、遮った。
「ですがマスター……」
チッ。
しつこい奴だ。
「俺の言う事が聞けないのか?」
「も、申し訳御座いません……」
よし、それでいい。
さて。
本も読んだ事だし、後は武器の整備や弾薬の把握とかしておくか。
俺は、『翼の神』をポーチに戻すと、変わりに武器を取り出し、目の前に並べた。
その行動の目的には、兵装確認の他に、『翼の神』の内容を忘れたいという思いもあった。
相変わらず、俺は逃げてばっかりだ。
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