真実

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ウルバキアへ向かう道中。 生い茂った木々と木々の間を、縫う様に進む。 道なき道を、ミリアが先行して進んで行く。 俺は、それについて行く。 なかなか、険しい道のりだな。 ミリアの奴、魔人だからといって、かなり奥地に住んでいたんだな。 この分だと、人里に辿り着くまで結構かかりそうだ。 そう言えば……。 「魔物共は襲って来ないな」 歩きながら、俺は感じた違和感をミリアに言ってみる。 ミキの狙いが俺なら、今襲ってきてもいいようなものだが……。 「ミキとて、馬鹿ではない 以前の急襲に失敗し、色々策を練っておるのだろう それまでは、考えなしに襲って来る事はないだろう」 「ほう 魔物の分際で殊勝な事だな」 するとミリアは、唐突にある提案を持ち出した。 「そこでだ ミキの考え次第ではあるが…… カズには素性を隠していてもらいたい」 ん? 「なんで?」 「これは可能性の話だが ミキの標的には、カズの仲間も含まれているかも知れないのだ」 「え?」 「だってそうであろう? 急襲に失敗したミキが次に考える事は、カズの戦力の低下だ カズの戦力――つまり仲間を殺していくと考えるのは定石と言える」 「ふむ…… それが、なんで俺の素性を隠す理由になるんだ?」 「カズの仲間はカズを捜索する為に、恐らくウルバキア周辺の森域に来たがっている筈だ」 「まぁ…… でも、失踪した俺を闇雲に捜す事をニルバニアが許可するとは思えないぞ? ただでさえ、急襲された直後だっていうのに アイツ等は今、ニルバニアから出られない状況だと思うが……」 「そうだな だが、ニルバニアからウルバキアにカズの捜索が依頼されていたとしたら?」 「どゆこと?」 「今から訪れるウルバキアの連中に、もしカズが見付かり、それがニルバニアに伝えられたら きっと、カズを引き取る為にニルバニアから仲間が駆け付けて来るだろう」 「つまり、その時にミキはアイツ等を急襲する……と?」 「あくまでも可能性の話だがな だから、カズは誰にも知られず、単独でニルバニアに帰還する事が望ましいのだ ミキはその内に私がなんとかする」 マジか、ミリアの奴。 俺の仲間を心配して、そこまで考えていてくれるとは。 すげぇ、良い奴だ。 「つまり、要約すると 俺はウルバキアの連中に、素性をバレない様にすれば良いんだな?」 「あぁ、その通りだ おっと、話しておる間に辿り着いたみたいだぞ?」 え?
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