真実

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ダグ博士の家に向かう道中。 「しかし、カズ 先程は見事な機転だったぞ 咄嗟に偽名を名乗るとはな なかなかできる事ではない」 ミリアは俺に感心して、そう言った。 「まぁな」 確かに、俺は自分でも驚く程、鮮やかに偽名を名乗っていた。 まるで、その偽名が本当に自分の名前かの様に……。 俺とミリアの会話に、ダグ博士も入ってきた。 「偽名? 何の事じゃ?」 ダグ博士の疑問には、ミリアが答えた。 「詳しい説明は省くが カズは今、素性を知られては色々と面倒な状況にあるのだ 今日1日は、ギルドの連中にバレぬ様にしておる」 「ふむ なるほどのぅ それで先程、叡人の問診に偽名を用いたのじゃな?」 「そんなところだ」 「因みにどんな偽名じゃ?」 「"デゼル"……だったか?」 「デゼルか…… まぁ、儂も詳しくは聞くまい じゃが、カズくんには1つ忠告をしておこう」 ん? 「なんですか?」 俺の反応を確認すると、ダグ博士は真面目なトーンで、とある忠告をしてきた。 「偽名を用いるという事は、自らを偽るも同義じゃ 何もかも捨ててしまった時、自分という存在をも捨ててしまわぬ様に、その偽名は忘れるべきじゃな さもなくば…… "闇"に堕ちるぞよ?」 は? 何言ってんだコイツ。 俺はダグ博士の言っている意味が、理解できなかった。 詳しく聞いておいた方がいいかもと思い、聞き返そうとしたが……。 「おっと そうこうしておる内に着いた様じゃな ここが儂の家じゃ」 どうやら目的地に到着したらしい。 まぁ、忠告はあくまで忠告だしな。 頭の中に入れてさえいれば、詳しく聞く必要もないだろう。 聞いたところで、必ずしも理解できる訳じゃないしな。 俺はダグ博士の忠告を、あまり気にしなかった。 そして、ダグ博士の家に到着した訳だが……。 うん。 どうみても、怪しい研究所だ。
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