真実

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"化け物"。 俺にとって、ニルヴァーナは"神"なんかじゃない。 故郷を滅ぼした"化け物"だ。 『翼の神』に描かれているニルヴァーナの位置付けは、世界を悪から救った神となっている。 『翼の神』のモチーフが、地球での出来事だというのなら、あの日地球を破壊していた化け物こそ、ニルヴァーナとなる訳だ。 俺達を苦しめたあの"化け物"が、時代を経て"神"として崇められているとはな……。 反吐が出る。 「化け物じゃと? そうか…… カズくんにとってニルヴァーナは忌むべき対象なんじゃな」 その事を、ダグ博士もミリアも理解していた。 「良く分かってるじゃねぇか」 「教えてくれ 一体、何が起きたのじゃ?」 あぁ? テメェ、自分で絵本に書いてあるだろ。 「その絵本の内容と、だいたい合ってるぞ 俺達の世界は、ニルヴァーナに襲撃されたんだ 俺は兵士として、ニルヴァーナの討伐任務に就いていた」 「ニルヴァーナに戦いを挑んだのか!?」」 あぁ!? だから、テメェの絵本にそう書いてあるだろ。 「絵本にも書いてあっただろ? 戦いを挑んだってな」 「そうじゃが…… まさか本気で勝つつもりだったのかの? 相手は神じゃぞ?」 「俺達の時代に神なんぞ居ない 偶像的なものを信仰する風潮は各地にあったが、神の正体を明確に知る奴なんて居なかった 俺達はただ、脅威を排除しようとしていただけだ」 「信じられん 勝つ見込みはあったのかの?」 「無きにしも非ずだな 勝つ負けるは別として、対抗する手段はいくらでもあった」 「それは魔法かの?」 は? 何言ってやがる。 「魔法なんてものは存在しない その代わり、科学があった」 「科学?」 「事象の原理原則を利用して、様々な現象を意図的に引き起こす技術だ 俺達はこれで兵器を造り、迫る脅威に対抗してきた 相手が人間だろうが、動物だろうが、神だろうがな」 「………… 凄い技術力じゃな……」 「俺達にとっては、それが普通だし日常だった だが、ニルヴァーナはそうは思わなかったんだろうな」 「ふむ その力を行使した事が、悪と見なされたんじゃな そして、滅ぼされたと……」 「そんなところだ」 話が終わったかと、思った時。 「じゃが、不可解じゃ」 ダグ博士は顎に手を当てて、考えていた。 「何が?」 「カズくんはどうやって アストランに来たのじゃ?」
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