真実

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なんだと……? 瞳の色が緑色? ちょっと待て。 俺はその特徴を有している人物に、心当たりがあるぞ。 大人びた見た目だが、内心は自己顕示欲の塊みたいな子供っぽい性格。 泣き虫で直ぐに言い負かされるが、無駄にポジティブで決して凹んだりしない。 叡人の割には魔力量が乏しく、落ちこぼれ。 にも関わらず、いつも高飛車な態度をとってくる。 だが、嫌いな奴でも思慮分別を弁えて、助けを差し伸べる気概の持ち主。 何故か嫌いになれないソイツは、俺の仲間の1人だ。 銀色の長髪をいつも癖の様になびかせるその女性。 名を、ティナ・ヴェール。 なんといってもその特徴は、緑色の瞳だ。 前々から不思議には思っていたが、ファンタジーの世界だからと、大して気にしていなかった。 冷静に考えてみれば、おかしな話だ。 緑色の瞳をした人など、見た事もない。 その瞳の色にどういう理由があるのかは、この際どうでもいい。 問題は、かつてラロの民と呼ばれていた連中の外見的特徴も、瞳の色が緑色だという事だ。 ダグ博士の言った事を整理し、因果関係を結び合わせると……。 ティナは、ラロの民の末裔という事になる。 そういえばティナは、自らが名門である事を自慢していたな。 ティナ自身、名門たる所以を理解していなかった様だが……。 もし。 希少な血族を保護したいというのが、ニルバニアの方針だとすると……。 ティナの一族を、名門たらしめ庇護下にしている可能性が無きにしも非ず。 いずれにせよ、ティナが名門である事と、ラロの民の末裔である事は無関係ではない筈だ。 つまり、ティナは現代のラロの民だ。 そうなると自ずと、ラロの民が使ったと言われる"修復"を、ティナも使える事になる。 もしかしたら、このタモサンをティナに修復させる事ができるんじゃないか? よし。 確証はないが、可能性がある限り試してみる価値はあるだろう。 そう思った俺は、ダグ博士にとある交渉をする。 「ダグ博士 コレを俺にくれないか?」
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