真実

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そこには、様々な建造物が確認できた。 建造物と言うほど大層な物でもないか……。 雰囲気そのものは、ルペス村と大差ないな。 草木が生え、半ば自然の一部と化してきているこのラロ遺跡。 特に目立つシンボル的な物はない。 幾つもの民家があるだけだ。 しかしその素材は木ではなく、石造りだな。 だからだろうか。 100年という月日が経っても、ある程度の形は成している。 滅ぶ前の状態が、浮かぶ様だ 。 いや。 "滅ぼされる"前か。 形を成しているのは、ほんの一部だった。 幾棟かは、激しく損壊している。 なるほど。 これが、ニルヴァーナの仕業か。 俺はミリアと共にラロ遺跡に入って、内部を歩き始めた。 「ラロ遺跡は"禁足地"と、密接しておってな ここが人の住む地域との、境界線なのだ」 「へぇー」 ミリアから情報を得つつ、進んでいく。 少し歩き、俺は直ぐに異変を感じた。 それは、生物の気配が一切感じられない事だった。 元来、"空間"というものは、生物にとって住み易い場所に成り得る。 洞窟や木の祠に、生物が住み込むのも。 人工物だってそうだ。 沈没した船の残骸に、水棲生物が生態系を築くのも。 だから、遺跡内に魔物共が潜んでいても何らおかしくない筈だ。 だが、このラロ遺跡には俺達以外の生命体の気配は感じない。 俺が気付いていないだけか? いや……。 決して広くない場所だ。 もし周辺に魔物が潜んでいるとしたら、リコが警告をしてくる筈。 この場所……。 何かあるのか? そんな疑問を感じながら、進んでいた時。 「カズ、止まれ」 「マスター! 止まって下さい!」 え!? ミリアとリコが同時に、俺に静止を促してきた。 なんだ!? やはり魔物が居るのか!? 「どうしたんだ?」 俺が尋ねると。 「マスター! この先は危険です」 とリコが言った後。 「左様だ カズの体では、この先には行けぬぞ」 ミリアもリコと同意見だった。 「どういう事だよ?」 「この先には、大変危険な毒が充満しておる」
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