真実

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ミリアとダグ博士が、この洞穴の形状に関して、幾何学的と表現していた理由が分かった。 確かにここの壁、天井、床、その全ての形状は直角に、平行に、垂直に、正しく揃えられている。 自然界では、間違ってもこんな形の洞穴が形成される事など有り得ない。 俺は確信した。 ここは間違いなく、人間が造りあげた施設だ。 かつての地下鉄だと。 「"ちかてつ"? なんだそれは?」 ミリアが疑問を尋ねてきた。 このアストランには、存在しない施設だからな。 無理もない。 俺は掻い摘んで説明をした。 「簡単に言えば通路だ」 「通路? 解せんな 何故、地下にそのようなものを作ったのだ? 暗く視界も悪い 現在地の検討もつかない と、不便極まりないではないか 地上を歩いた方がよっぽどマシではないのか?」 「地上には、高層な建物が幾棟も建ち並んでいたからな 直進に進める地下の方が、移動には効率的だったんだ」 「しかし、長時間の移動は骨が折れよう? 空気だって澄んでおらぬのに」 「移動手段は徒歩じゃないぞ? 電車といってな、まぁ高速で動く荷車みたいなものに乗って移動するんだ 空調だって管理されていたし、光も行き届いていたから何も問題はない」 「ほう…… 私には想像もつかぬが それもまた科学の力なのか?」 「あぁ 自然界では有り得ないような事が、俺達の生活には普通に馴染んでいた 地下鉄なんて、ありふれた施設だったよ」 「ふむ…… 思っていた以上に、凄まじい技術力を有しておったのだな では…… もしかして、"アレ"もその科学とやらで造られた物やも知れぬな……」 ん? "アレ"? 「"アレ"ってなんだよ?」 俺はミリアの発言から、とあるワードが気になった。 "アレ"について尋ねてみると。 「この奥で見付かった巨大な鉄の塊だ 物が物だけに、運ぶのは不可能な代物でな ダグを連れてくる訳にもいかぬから、正体が分からぬ終いなのだ」 「鉄の塊?」 「あぁ どうやら、ラロの民が修復させようとした物らしいのだ」 なんだと?
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