真実

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間違いない。 これは戦車だ。 しかも、かつて俺が搭乗していた "10式戦車(ヒトマル)" と、同型車だ。 「マジかよ……」 思わず声が漏れる。 なんでこんなものが、地下鉄にあるんだ? いや。 過去に起きた事を、あれこれ推測だけで考えていても分からない。 先ずは現物の確認だ。 気付けば俺は、ヒトマルに向かって走り出していた。 「カズ!? 迂闊に近付いて大丈夫なのか!?」 俺の行動にミリアは、焦りの声を掛けてきた。 「大丈夫だ 俺はこれに乗っていたからな」 答えながら俺は、ヒトマルに駆け上がる。 「乗っていた? するとこれは乗り物なのか?」 「あぁ 戦う為に造られた車 戦車って代物だ」 「戦車……? こんな大きな鉄の塊を動かせていたというのか?」 「そうだ もっとも、もう動かせそうにないけどな」 俺はヒトマルの外観を大まかに調べて、もう走れない事を理解した。 流石に1000年も経っていたんじゃあ、エンジンが活きている筈がないよな。 しかし、ラロの民が一部分だけ修復しているというのは本当みたいだ。 装甲の一部分だけ、やけに真新しい。 本来なら全て修復する予定だったんだろうが、途中で止まっているな。 修復されていない部分は、キャタピラ、砲身、その他の機構諸々か……。 だが、ハッチの修復はされているな。 ここから中に入れるかも知れない。 そう思った俺は、ヒトマルの上部に位置するハッチに手をかけた。 が、ラロの民が滅亡して100年の月日は経っているからな。 そこから再び劣化した事を鑑みるに、結構錆び付いている。 これイケるか? 俺は力を掛けて、ハッチを引っ張った。 「ぐぬぬ……!!」 っはー……。 駄目だ。 開きそうで開かない。 非力な人間の力じゃあ、これが限界か。 今こそ、ガルムの馬鹿力が役立つというのに。 まぁ、ないものを嘆いていても仕方ないか……。 何か、良い方法はないのか? と、俺が悩んでいる時。 「どうしたのだ? もしや、そこが扉になっておるのか?」 ミリアもヒトマルに上っていた。 俺の隣で、ハッチについて尋ねてくる。 「あぁ なんとか、開く手段が――」 そこまで言った時。 ん? 俺はある事を閃いた。 「そういえば ミリアは"酸"も扱えるんだったよな?」
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