真実

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"残留思念"か。 察するに、物に宿る人の思いみたいなものか? 良く分からんが。 「どういう魔術なんだ?」 俺が尋ねると、ミリアは分かり易く説明してくれた。 「要するにだ この者が死ぬ前に綴った遺言書みたいなものだな」 「へぇー でもそれって、普通に文字で書けば済むんじゃねぇの?」 「その発想は実に古典的だな 文字で書ききれない程の内容だったり、筆記する為の道具がなかったりする場合に用いる魔術だ それにこの"残留思念"には、とある条件がなければ読む事はできぬ仕組みになっておる」 ん? 「とある条件?」 「魔術の発動者が死ぬ事で初めて、"残留思念"は読み取りが可能となるのだ」 「なるほど まさに遺言書にはうってつけだな」 「あぁ 本来は死者との会話を成す為にと、生み出された魔術の副産物らしい まぁ、結局のところ当の目的は成し得なかったみたいだがな」 ふむ……。 魔術の成り立ちにも、色んな背景があるんだな。 っていうか……。 「ミリア詳しいな」 「フフッ ダグの受け売りだ あやつから色々と、ラロの民について聞かされていたからな」 なるほど。 確かにダグ博士は、ラロ遺跡を調べていたと言っていたしな。 ラロの民の文化も、多少は知っているみたいだ。 何はともあれ。 今の話だと、この死体が持っている術式とやらが記された紙切れから、色々と分かるらしい。 残留思念の読み取り可能な条件は、既に成してあるからな。 よし。 「行くか」 「うむ」 俺はミリアとヒトマルの内部へと入り、死体が握っていた紙切れを手に取った。 そして、それをミリアに渡し、尋ねた。 「どうやって"残留思念"を読み取るんだ?」 紙切れを受け取ったミリアは。 「簡単だ 魔力を、ほんの少し与えてやればよいのだ まぁ、見ておれ」 そう答えを言うと、紙切れを握る手に少しグッと力を込めた。 すると……。 紙切れに記されてある奇妙な模様の術式とやらが、まるで分離するかのようにほぐれてきた。 そして、その模様は文字へと姿を変え、宙に浮かんだ。 おぉ……。 すげぇ……。 なんて、感心しながらその文字を読んでみる。 どれどれ? そこには、こう記されてあった。
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