駆除

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"闇術"か……。 俺に宿っている"闇"属性の魔力を、術として応用する方法だったな。 確かに、このアストランに住まう連中みたいに魔術が使えたら便利だと思うが……。 所詮、俺は余所者だぞ? 宿っている魔力量も微々たるものらしいし、今更魔術が扱える様になるとは思えないんだが……。 なぜミリアは、"闇術"についての話を持ち出したんだ? 「俺には魔術なんて使えないと思うが」 消極的な俺の意見に、ミリアは自らの考えを述べた。 「カズは、かつて栄えた科学という力を授かっておるようだな」 ん? 武器の事か? 「あ、あぁ……」 「まさか、その恩恵がこの世界でいつまでも使えると思っておるほど、めでたい頭はしておらぬだろう?」 「うっ…………」 ミリアの言った事はもっともだった。 確かに俺が持っている唯一の魔物に対抗する手段は、文明の利器"銃"だけだ。 急所さえ捉えれば、一撃で魔物を葬り去れる、言わばチート武器。 その強さたるや、 Dランクの家畜から、 Sランクの超危険魔物 にまで平等に分け隔てなく効果を発揮する。 威力も使い勝手も申し分ないが、ただ一つ欠点がある。 それは言わずもがな、"弾薬"だ。 弾薬が切れてしまえばただの鉄塊と化す。 最強が一転して最弱どころか無力にまで下落する。 そして今現在。 俺の装備は……。 拳銃一丁で、拳銃弾6発。 手榴弾1個。 ナイフ1本。 という貧弱ぶりだ。 そう遠くない内に、俺は力を失う。 つまりミリアが言いたい事は……。 「このアストランで住み続けるのならば、最低限の魔術は扱えなければ困るぞ?」 という事らしい。 俺はせめてもの反対意見を出してみる。 「でも、獣人だって魔術を使えないだろ? 実際はそんなに困らないんじゃないか?」 すると。 「カズは獣人ではないであろう?」 見事に論破された。 「お、おう……」 「それに、一般の者ならまだしも、カズは兵士であろう 何らかの攻撃魔術を習得しておかねば、いつか泣きをみるぞ?」 むむむ……。 ミリアが正論ばかり言ってきて、ぐうの音も出ない。 拳銃が使えなくなる前に、それに変わる対抗手段を習得しなければならない訳か……。 そこで浮上したのが、俺に宿っている闇。 それを活用する方法らしいのだが。 っていうか、そもそも……。 「闇術ってどんな魔術なんだ?」
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