駆除

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ミリアは、あの洞窟で独りで暮らしているからな。 何かに理由をつけて、他人との関わりを求めているみたいだ。 寂しがりやな奴め。 だがまぁ、魔術を教えてくれるというのは、俺にとっても利がある。 俺はミリアの申し出を受ける事にした。 「良かったなミリア 俺が居るから、もう寂しくないな」 「だ、誰が! 私はそんなに寂しがってはおらぬぞ からかうでない!」 「ハハハ! 悪かったよ まぁ、よろしく頼むよ "師匠"」 「フン! 調子に乗りよって 私の指導は厳しいぞ? 果たしてカズに耐えられるかな?」 「お手柔らかに頼むよ こちとらか弱い人間なんでな」 「まぁ、覚悟しておく事だな」 「あぁ」 そして俺は、ミリアに闇術の扱いを習う約束を取り付けた。 が。 「まぁ、その教授は、しばらく後になりそうだがな」 「そうだな」 俺はミリアの言った事を理解していた。 その前にやるべき事がある、と。 それは、獣の王・ミキの殺害。 要はネズミの駆除だ。 俺とミリアが大分話している間に、周りの景色はがらりと変わっていた。 気付かない内に、随分と進んだみたいだな。 木々が鬱蒼と生えているところまでは、今までの景色と大差ない。 しかし、雰囲気はまるっきり別物だ。 霧が濃く、天気の影響もあってか光が満足に差し込まない。 まさに、不気味を体現したかのような森だった。 ふと、足が地面にとられた。 見ると、地面は水分を多く含んだ泥状になっている。 気にせずしばらく進むと、沼が姿を表した。 この沼から流れ出る水が、周辺の土を柔らかくしているのか。 なるほど。 ここは沼地か。 と、確信した時。 「ぐっ……!!」 俺は強烈な刺激臭に襲われた。 く、臭いなんてレベルじゃねぇぞ……。 鼻がもげそうだ。 この沼の水……。 良く見たら、骨やら血肉やらが沈滞している。 水というよりは汚水か。 いやもっと酷い。 この水は腐ってやがる。 これ以上ここに居たら、どうかなっちまいそうだ。 俺は足を止め、進む事を躊躇していた。 その時。 ミリアは俺を叱咤する様に言った。 「カズ ここまで来ては、もはや引き下がれぬぞ 仮面を身に着けるのだ それで多少はマシになるのであろう? 覚悟するのだ ここは"泥洞・ボロス" あらゆる生命を拒絶する場 獣の王の篭城であるぞ」
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