駆除

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ミリアの発言を聞いて、俺はこの場所がなんなのか理解した。 そうか、ここだったのか。 ここが、"泥洞・ボロス"だったのか。 ミリアが言うに、"獣の王の篭城"との事だが。 つまり、この一帯のどこかにミキが潜んでいるという事になる。 なるほど。 それは確かに引き下がれないな。 俺はミリアに言われた通りに、ガスマスクを装着した。 ふぅ……。 これで、大分楽になった。 危うく、呼吸困難に陥るところだ。 っていうか、ミリアは平気なのか……。 なんというか……。 流石は魔人だな。 「俺なら大丈夫だ」 俺はミリアに、進む意志がある事を伝えた。 「フッ 流石は私の見込んだ人間だ それでよい」 ミリアはそう言って歩を進めた。 俺って、見込まれてたんだ。 なんて少し戸惑いながら、ミリアについて行く。 泥沼は浅く、普通に歩いて進める程度だった。 それでも、歩く事には勿論抵抗があった。 が。 さも平然と、しかも裸足で泥沼を進むミリアを前に、俺は着いて行くしかなかった。 ミリアさん、アンタすげぇよ。 腐った死骸が無数に沈んでいる沼を進みながら、ミリアは話しかけてきた。 「実を言うと この辺りは、つい最近まで"禁足地"だったのだ」 「まぁ、確かに かなり荒んでいるしな 今後は開拓されていくのか?」 「どうだろうな 見ての通り、この不気味さだ ギルドの連中も、あまり近寄りたがらないのが現状であろうな」 「つまり、事実上はここは"禁足地"なのか」 「そうだな だから、ミキにとって都合が良い場所なのだろう 人の領域でありながら、獣を統べる拠点というのはな……」 言い終わり、ミリアは立ち止まった。 ん? ミリアが立ち止まった理由を知る為、俺はミリアと並んだ。 すると、目の前に大きな洞を確認できた。 中は深淵と見紛うほど、真っ暗で、見ているだけで吸い込まれそうになる。 自ずと恐怖心を煽られる。 不気味の極みだ。 「ここは……?」 恐る恐る尋ねる俺。 すると、ミリアは確信した様に答えた。 「ミキの住処だ さしずめ、獣の王城かな」
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