駆除

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な、なんだ!? その声は、ドスの効いたハスキーな声色だった。 声だけを聞くと、厳ついオッサンの姿を連想させる。 が、その声を発した者の正体が、人ではない事をミリアは知っていた様だ。 「久しいなミキ」 言って、声が聞こえてきた方向を見る。 ミキだと? そうか、コイツがミキか。 以前のミリアの説明で、ミキは人語を扱う事ができる魔物だと、教えられていた。 納得した俺は、ミリアの向いた方を確認する。 10m程、離れたところだろうか。 そこには、一匹の灰子が確認できた。 確かに灰子なのだが……。 先程、洞窟の入口付近で見かけた灰子とは、風貌に差異が見られる。 先ず、誤差の範囲ではあるが少し体躯が大きい。 そして、色は濃い灰色。 何より違いは、瞳の色が白かった。 王者の風格があるかどうかは俺には分からないが、他の灰子と比較して確かに見た目は違うな。 ミキは、ミリアの言葉にゆっくりと答えた。 「汝は、もしやミリアか? 漸く人の身を捨て、獣として余の配下に下る気になったか?」 ミキはどこか落ち着きがあり、余裕のある喋り方をしていた。 あぁ、なんか王様っぽい雰囲気あるわ。 っていうか、なんだその内容は。 ミリアを見下し、完全に上から目線だな。 ミリアはミキに反発の意志を見せた。 「笑えない冗談だ」 するとミキは。 「余の誘いを断るとは、なんと愚かな ミリアよ 汝は何故"人"で在り続けようとする?」 なにやら、2人……いや1人と一匹の間には何かあったらしい。 とりあえず俺は、見物しとくか。 ミリアは答える。 「私は"人"だからだ いくら不気味がられようと、人は裏切らぬ」 「……… 理解に苦しむ」 「それは私の台詞だ」 「何?」 「ミキ 最近のお前の行動は目に余る 近隣の村を魔物共に襲わせているようだな 詳しい話を聞かせてもらうぞ」 すると、ミキは。 「良かろう では話してやろう だが、その前に……」 そう言った後、目を大きく見開いた。 次の瞬間。 どこからともなく、灰子が湧いて出て、あっという間に俺は、そのおびただしい数の灰子に四方を囲まれた。 え? えぇぇ!? ミキは続ける。 「余の視界に"人間"が入るなど、万死に値する 目障りだ 余の配下たる獣達の餌になってもらうぞ」 いきなりピンチな俺である。
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