駆除

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「マスター!! 逃げて下さい!!」 リコが、蒼白してそうな声で叫んでいた。 まぁ、機械だから蒼白なんてする筈ないんだが。 って、いやいや! そんな事はどうでもいい! ちょっと待ってくれ! なんだ、この状況! さっき洞窟入口で見た時の灰子共は、俺を見て逃げ出すくらい臆病で、戦意などまるで感じられなかった。 それなのに、今はどうだ? この灰子共は俺に敵意をむき出しにして、威嚇なのかネズミ特有の甲高い鳴き声を放っている。 俺はたじろいながらも、その灰子共を見渡してみる。 すると、ある事に気が付いた。 それは、灰子共の瞳の色だ。 その全てが一様に、白濁していた。 なんだ? 洞窟入口で見た時は、普通に黒かった筈だが……。 この特徴は、まさか……。 俺がこの状況について考えていた時。 突然ミリアは、焦った様子で叫んだ。 「ミキ! よせ! 灰子共を引かせろ!」 ミリアの発言を聞いて、俺は確信した。 そうか、これがミキの玉璽――"統導"か。 ミキは魔物を操ると、副作用が起きる。 その副作用こそが、操っている魔物の瞳の色を、ミキ同様に白くしてしまうらしい。 つまり、この灰子共はミキに操られて、俺を食う気でいるって事か。 臆病な魔物をここまで豹変させるとは、大した力だな。 だが所詮は、烏合の衆。 最弱の魔物が幾ら集まろうが、脅威は感じないな。 なんて俺は、慢心してみるが……。 「チューチュー、チュー……」 「チューチュー、チューチュー」 「チューチュー、チュー、チュー」 灰子共の鳴き声を聞く内に、不安になってくる。 あ、ダメだこれ。 最弱とはいえ、魔物には変わらない。 俺が銃を使ったところで、この数相手は流石に分が悪い。 まさに数の暴力。 「え……ちょっ……」 うろたえる俺を余所に、ミキは無慈悲に命令を下した。 「やれ…… 眷族達よ…… 穢らわしい人間を、肉片へと変えてやるのだ」
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