駆除

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待て。 待て待て待て。 ちょ……!! 俺は灰子の急襲に身構えた。 筈なのだが……。 「やめろ」 俺は何故だか落ち着いていた。 そう一言だけ発すると、灰子共はガクガクと震えだし微動だにしない。 俺の発言は割と声量が小さかった。 その為、ミキにもミリアにも聞こえなかった様で、その灰子共の様子を不思議がっていた。 「? どうした眷族達よ 余の命が聞けぬのか?」 「カズ……?」 俺だって、この状況は理解できていない。 最近の俺は、自分の意思とは関係のない発言や態度をとってしまう事が多々ある。 しかも灰子共は、明らかに俺にビビっているし……。 何故だ? まぁ、おかげでなんとか助かった……のか? と、少し気を抜くと。 「シャー!!」 途端に灰子共は、俺目掛けて飛びかかる。 やっぱり、襲われるのかよ!! 「クッソ……!!」 どう対処しようか、一瞬の内に考えを巡らせる俺。 その時。 「マスター!! すみません!!」 リコが突然、そう叫んだ。 何故か謝ってるし。 リコの謝罪の意味が分からないまま、それは起きた。 「――ぐぉ!?」 突然、俺は衝撃を受けた。 物理的な衝撃だ。 この感覚は、以前にも受けた覚えがある。 間違いない。 電撃だ。 なるほど……。 リコの奴、俺を助ける為にやむを得ず電気を放ったのか。 そう理解した俺は、その電撃に耐えつつ辺りを確認した。 周りは水辺だ。 リコの放った電撃は、一瞬で周辺を感電させていた。 当然、沼地に接していた灰子共も感電。 幾匹もいた灰子の集団は、その全てが一瞬で絶命していた。 恐らく、心臓麻痺による心停止を引き起こしたのだろう。 流石、最弱の魔物だ。 人間の俺に耐えられる程度の電撃でも、灰子共には耐えられなかったみたいだな。 「マスター…… 大丈夫ですか?」 リコは申し訳なさそうに、心配してきた。 「あぁ 大丈夫だ」 「すみません 他に方法が思いつかず…… これがマスターをお助けする、最も確率の高い方法だったんです」 「気にするな 俺もあの方法がベストだと思う リコは自分の信じる事をすればいい よくやった」 「はい!」 さて、リコの思わぬ機転で助かったが……。 安心はしていられないな。 今の電撃に、ミリアまで巻き込んだかも……。 やべぇな。
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